認知症のサイン
「最近、同じ話を何度もするようになった」
「ちょっとした失敗が増えてきた気がする」——
ご家族の何気ない「あれ?」という気づきが、認知症の早期発見につながることがあります。
このページでは、日常のどんな変化に注目すべきか、いつ受診を考えるべきかを、家族目線でわかりやすくご紹介します。
「気づき」が大切な3つの理由
認知症のサインを早く見つけることには、大きなメリットがあります
治療の選択肢が広がる
2023年以降、早期の軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー型認知症に対して、進行スピードを遅らせる疾患修飾薬(レカネマブ・ドナネマブ)が使えるようになりました。
早い段階での気づきが、新しい治療を受けられるかどうかの分かれ道になります。
※いずれも、えびな脳神経クリニック公式サイト(別タブ)が開きます
ご本人の意思決定に間に合う
早期の段階なら、ご本人が判断力を保った状態で、今後の暮らし・介護・お金の希望を伝えることができます。
「どこに住みたいか」「どんな治療を望むか」——ご本人の意思を尊重した準備ができる貴重な時間です。
ご家族の負担を抑えられる
早期に受診すれば、介護保険サービスや地域の支援制度を計画的に活用できます。
「もう限界」となる前に体制を整えることで、ご家族が抱え込まず、ご本人にも穏やかな暮らしを届けられます。
こんな変化に気づいたら【4つのサイン】
認知症の初期サインは、大きく4つのカテゴリに分けられます。
複数当てはまる場合、早めのご相談をおすすめします。
① 記憶・物忘れのサイン
「体験そのもの」を忘れてしまうことが特徴です
- ✓同じ話や質問を何度も繰り返す
- ✓数分〜数時間前のことを覚えていない
- ✓約束や予定を忘れることが増えた
- ✓物をしまった場所を忘れ、なくす頻度が増えた
- ✓家族の名前や関係を思い出せないことがある
② 判断力・思考力のサイン
「段取り」や「判断」が難しくなることが特徴です
- ✓料理の手順が分からなくなる、味付けが変わる
- ✓今日の日付・曜日・季節が分からない
- ✓お金の計算・小銭の扱いに戸惑う
- ✓テレビや新聞の内容が理解しづらそうにしている
- ✓簡単な判断に時間がかかる、決めきれない
③ 行動・生活習慣のサイン
「今までできていたこと」ができなくなるのが特徴です
- ✓身だしなみや服装に無頓着になる
- ✓入浴・歯磨きの頻度が減る
- ✓季節に合わない服装をする
- ✓冷蔵庫に同じものが大量にある/賞味期限切れが多い
- ✓趣味や外出への興味が急に薄れた
④ 性格・感情のサイン
「元の人柄と違う」変化に気づいたら要注意です
- ✓怒りっぽくなった、些細なことで感情的になる
- ✓疑い深くなり「盗られた」と言うことがある
- ✓無気力・無関心になり、活気が失われている
- ✓うつ的な気分の落ち込みが続いている
- ✓人との交流を避けるようになった
日常シーン別チェックリスト
日常の具体的な場面で「あれ?」と感じる変化を挙げてみます
🛒 買い物・お金
- レジで小銭の計算ができず、いつもお札で払う
- 同じ商品を何度も買ってくる
- 通帳の記帳やATM操作に時間がかかる
- 不要なものを衝動的に買うようになった
🍳 料理・家事
- 得意料理の味付けが極端に変わった
- 火の消し忘れ・鍋の焦がしが増えた
- 洗濯機や電子レンジの操作が分からなくなる
- 掃除の段取りが立てられない
🚶 外出・移動
- 慣れた道で迷う、目的地に着けない
- 車の運転で軽い接触や違反が増えた
- 外出そのものを避けるようになった
- 戻り時間が予定より遅れることが多くなった
💬 会話・コミュニケーション
- 「あれ」「それ」など指示語が増える
- 言いたい言葉が出てこず、話が止まる
- 電話やLINEの返事が遅くなった
- 会話が噛み合わないことが増えた
📱 スマホ・家電
- 今まで使えていたスマホやリモコンが使えなくなる
- テレビの音量が極端に大きくなる
- エアコンの操作が分からず、暑さ寒さに無頓着になる
加齢による物忘れとの違い
「年のせいかな?」と思ったら、まずはこの表で見分けてみてください
| 項目 | 認知症のサイン | 加齢による物忘れ |
|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験そのものを忘れる (例:食事したこと自体を忘れる) |
体験の一部を忘れる (例:何を食べたかを忘れる) |
| 自覚 | 忘れている自覚がない | 忘れている自覚がある |
| 進行 | 徐々に進行し、日常生活に支障が出る | 大きな変化はなく、生活には支障が少ない |
| 物をなくした時 | 「誰かに盗られた」と言うことがある | 自分で探して見つけられる |
| 日付・時間 | 今日の日付や季節がわからなくなる | 確認すれば分かる |
認知症全体の症状・種類について詳しく知りたい方は、「認知症について」ページもあわせてご覧ください
すぐに受診を検討したい危険サイン
以下のような変化が見られた場合、生活の安全にも関わるため、
できるだけ早めのご相談をおすすめします
- ⚠数ヶ月〜1年で急に物忘れや失敗が目立つようになった
- ⚠火の消し忘れ・ガスの締め忘れなど生活上の危険が発生している
- ⚠道に迷い一人で帰れないことがあった
- ⚠被害妄想や幻視が続いている
- ⚠怒りや暴言・暴力が急に増えて、家族が対応に困っている
- ⚠服薬・食事の管理ができなくなり、体調不良が起きている
※ひとつでも当てはまる場合、放置せずお電話でご相談ください。
セルフチェッカーのご案内
気になるサインがある方は、「認知症簡易チェッカー」で客観的に振り返ってみましょう。
ご本人・ご家族どちらの視点でもお使いいただけます。
※えびな脳神経クリニック公式サイト(別タブ)が開きます
本チェッカーは診断ではなく、あくまで自己評価用の目安です。
気になる結果が出た場合は、専門医への相談をおすすめします。
気づいたときのご家族の初期対応
サインに気づいたら、まずはご家族が落ち着いて4つのステップを踏みましょう
01
責めない・急かさない
「なんで忘れるの!」と責めると、ご本人は混乱と不安を強めてしまいます。
ご本人にとって「初めての質問」であり「初めての失敗」です。まずは静かに受け止めましょう。
02
観察して記録する
気になる変化を、日付とともにメモしておきましょう。受診時に医師へ伝える貴重な情報になります。
- いつから、どんな症状が出たか
- 頻度・変化のスピード
- ご本人の反応・気分の変化
03
家族だけで抱え込まず相談する
「まだ様子を見よう」で悪化するケースは少なくありません。ご本人を無理に連れて行かなくても、ご家族だけのご相談も可能です。
認知症疾患医療センターや地域包括支援センターにお電話ください。
ご本人が受診を強く拒む場合/独居でご家族が近くにいない場合
「本人がどうしても病院に行きたがらない」「離れて暮らしていて日常の様子を把握しづらい」——
そうしたときは、いきなり受診を目指すのではなく、まずはご自宅を訪問して状況を確認してもらう方法があります。
各自治体には、医師・看護師・介護職などの多職種チームがご自宅を訪問し、医療や介護サービスへ橋渡しをする「認知症初期集中支援チーム」があります。
地域包括支援センターからのご相談で動くケースもあり、ご家族だけでは動きづらい場合の心強い選択肢です。
当センターは、初期集中支援チーム・地域包括支援センター・近隣医療機関等と連携しています。海老名市の認知症初期集中支援チームは、当グループのえびな脳神経クリニックが海老名市より受託運営しているため、海老名市の方は当センターから支援チームへ直接おつなぎすることも可能です。
「どのルートが自分の家族に合うか分からない」という段階でも、まずは認知症専用ダイヤルまでお気軽にお電話ください。ご状況に合わせた最適な相談先を一緒に整理いたします。
まずはこちらへ
📞 046-204-8817
認知症専用ダイヤル / 受付:月〜金 9:00-18:00
04
専門医療機関で診断を受ける
正確な鑑別診断には、専門医の診察・MRI・神経心理検査が必要です。
「認知症かどうか」だけでなく「どの種類か」「どんな対応が最適か」まで見立てられます。
ご相談・ご予約はお電話で
「気になるけど、受診までは……」というご家族もお気軽に。
ご本人抜きでのご相談も、もちろん歓迎です。
アクセス・受診場所
当センターは、えびな脳神経クリニック内に併設されています
えびな脳神経クリニック
〒243-0438
神奈川県海老名市めぐみ町3-1
ViNA GARDENS PERCH 601-12
🚉 アクセス
小田急線・相鉄線・JR相模線「海老名駅」西口より徒歩1分
ViNA GARDENS PERCH 6階(エレベーターにてお越しください)
※駐車場ご利用の方には1時間分のサービス券を発行しております。
よくある質問
Q. 認知症のサインはいつ頃から現れますか?
アルツハイマー型認知症の場合、脳内の変化は発症の10〜20年前から始まっていると言われています。
実際に日常生活で気づかれるサインは、発症の数年前から少しずつ現れることが多く、「同じ話を繰り返す」「約束を忘れる」といった軽い物忘れから始まるケースが一般的です。
Q. 一人暮らしの親のサインをどう見分けたらよいですか?
直接会って過ごす時間が短くても、以下のような点で気づけることがあります。
・冷蔵庫の中身(同じものが大量にある/賞味期限切れ)
・郵便物や新聞のたまり方
・服装や部屋の様子の変化
・通帳や振込明細の異変
電話やLINEでの会話のかみ合いにくさも、重要なサインになります。
Q. 本人は「大丈夫」と言っています。それでも受診すべきですか?
認知症の初期では、ご本人に自覚がないことがほとんどです。
「まだ大丈夫」と感じるうちに受診することが、治療の選択肢を広げる大切な機会になります。
ご本人が難色を示す場合は、まずご家族だけでご相談いただくことも可能です。
Q. 認知症のサインに気づいたら、何科を受診すればよいですか?
認知症は脳の病気のため、脳神経内科・脳神経外科・精神科・老年科などが専門です。
特に「認知症疾患医療センター」は神奈川県などの自治体が指定する専門機関で、鑑別診断・専門相談・地域連携までワンストップで受けられます。
当センターは神奈川県指定(連携型)認知症疾患医療センターとして、地域のかかりつけ医と協力しながらお支えしています。
Q. 受診を拒む親をどう説得したらよいですか?
「認知症の検査」ではなく、以下のような言い換えが受け入れられやすいです。
・「健康診断のついでに、脳もチェックしてもらおう」
・「物忘れ外来で、頭の血の巡りを診てもらおう」
・「私も気になるから、一緒に検査してもらおう」
それでも難しい場合は、まずご家族だけでご相談ください。ご本人に合わせた受診の促し方を、一緒に考えさせていただきます。
Q. 若年性認知症(65歳未満)のサインは違いますか?
基本的なサインは共通していますが、若年性認知症は仕事のミスや遂行力の低下で気づかれることが多い傾向があります。
・書類のミスや納期遅れが増えた
・段取り力や判断力が落ちた
・急に人が変わったような性格変化がある
働き盛りの世代でも発症しうるため、気になる変化があれば早めにご相談ください。
Q. うつ病と認知症のサインは似ていると聞きました。見分けられますか?
高齢の方の場合、うつ状態と認知症の初期症状は非常に見分けが難しく、両者が併存することもあります。
「無気力」「意欲の低下」「集中力の低下」といった症状は、どちらでも見られます。
専門医の診察と検査(MRI・神経心理検査)で正確に鑑別できますので、自己判断せずご相談ください。
■ 参考文献・ガイドライン
- 日本神経学会 監修『認知症疾患診療ガイドライン2017』
- 厚生労働省「認知症施策推進大綱」
- 厚生労働省「認知症初期集中支援チーム 標準的な業務の流れ」
- 厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査(2009年)」
- 米国精神医学会『DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)』
- 厚生労働省「レカネマブ(レケンビ®)最適使用推進ガイドライン」
※本ページは、当認知症疾患医療センター長である尾崎聡理事長(神奈川県認知症サポート医)やえびな脳神経クリニックの岩田智則院長(日本認知症学会専門医・指導医)の監修に基づき、医学的根拠のある情報を分かりやすくお伝えすることを目的としています。
個別の症状については、必ず医療機関で診察をお受けください。
関連ページ
あわせてこちらもご覧ください