認知症リスクを下げる14の要因 ─ 目の愛護デーに知る”目と耳”と脳の健康

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認知症コラム #認知症予防 #40〜60代のご家族へ #目の愛護デー

「テレビの音が、少しずつ大きくなった気がする」
「新聞の字が読みにくいけれど、年のせいだから……」

そんな”見え方”や”聞こえ”の変化を、
そのままにしていませんか。

毎年10月10日は「目の愛護デー」です。
実は近年、目と耳の健康は、
認知症のリスクと関わると分かってきました。
今日は、国際的な専門家委員会がまとめた「認知症リスクを下げる14の要因」を、目と耳に注目してご紹介します。

【この記事のポイント】
英国の医学誌『ランセット』の委員会は、14の要因に対処すれば、認知症の約45%は予防または発症を遅らせられる可能性があるとしています。
14の要因には、「難聴」と「治療されないままの視力低下」が含まれています。
見え方・聞こえの変化は「年のせい」と片づけず、眼科・耳鼻咽喉科で確かめることが、はじめの一歩です。

「認知症の45%は減らせる可能性がある」
という報告

日本の認知症の高齢者は、厚生労働省の推計で、2022年に約443万人、2040年には約584万人になると見込まれています。※1
海老名市・座間市・綾瀬市でも、高齢化とともに「身近な病気」になりつつあります。

そうした中で、2024年7月、英国の医学誌『ランセット』の専門家委員会が、認知症の予防・介入・ケアに関する報告書を公表しました。※2※3

そこで示されたのが、「生活や健康状態の中で、変えることができる14の要因」です。
2020年の報告では12でしたが、2024年に、新たに2つが加わって14になりました。※4
研究が進むほど、「取り組めること」が増えてきた、と言い換えることもできます。

この14の要因をすべて取り除けたと仮定すると、理論上、認知症の約45%が予防または発症を遅らせられる可能性があるとされています。※3
2020年の報告の約40%から、約5ポイント上がりました。※4

「45%」は、集団全体で見たときの理論上の数字です。
一人ひとりの発症を約束するものではありませんし、「努力が足りなかったから発症した」という意味でもありません。
それでも、「認知症は、何もできない病気ではない」という大切なメッセージが込められています。

認知症リスクを下げる14の要因
(人生の段階別)

14の要因は、人生のどの時期に特に影響が大きいかによって、3つの段階に整理されています。
早い時期(18歳まで)は「教育」、高齢期(65歳以上)は「社会的孤立・大気汚染・視力低下」の影響が、特に大きいとされています。※4

  • ■ 若い時期(〜18歳ごろ)
  • 教育を受ける機会が少ないこと
  • ■ 中年期
  • 難聴(聞こえにくさ)をそのままにしていること
  • LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高いこと
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 運動不足
  • うつ病
  • 頭部外傷(頭を強く打つけが)
  • ■ 高齢期(65歳以上)
  • 社会的孤立(人と会う機会が減ること)
  • 大気汚染
  • 視力低下をそのままにしていること

2024年に新たに加わったのは、「高LDLコレステロール」と「治療されないままの視力低下」です。※3
推定される影響の大きさは、高LDLコレステロールで約7%、視力低下で約2%とされています。※3
難聴も、影響が大きい要因の一つとされています。※2

いずれも、健診や受診、日々の暮らしの中で向き合えるものばかりです。

目と耳が”新しく注目されている”理由

見え方:2024年に新しく加わった要因

「治療されないままの視力低下」は、2024年の報告で初めて14の要因に加わりました。※3

緑内障は、日本における中途失明の原因として上位の病気です。※5
日本緑内障学会の調査(多治見スタディ)では、40歳以上の5.0%、つまり20人に1人が緑内障と報告されています。※5
年代が上がるほど増え、70歳代では約10%でした。※5

見えにくさが続くと、外出や会話、読書などの活動が減り、脳への刺激が少なくなると考えられています。
転倒など、日常生活での危険が増えることもあり、ご家族にとっては見逃せない点です。

聞こえ:14の要因のひとつ

加齢性難聴(年齢とともに進む聞こえにくさ)は、ゆっくり進むため、ご本人が気づきにくいのが特徴です。
一般に、高い音や子音(「さ」「た」「か」など)から
聞き取りにくくなるため、「声は聞こえるのに、何を言っているか分からない」という形で現れます。

聞き取りに脳の力を使い過ぎることや、会話を避けて孤立しやすくなることが、認知機能への影響として考えられています。
「聞き返しが増えた」「電話が苦手になった」「会話の輪から外れがち」は、受診のサインです。

目も耳も、「年のせい」と片づけられがちです。
けれど、どちらも検査で状態が分かり、治療や補聴器などの対応ができる、取り組みやすい入口です。

ご家族が気づける、
見え方・聞こえの変化のサイン

ご本人は「困っていない」とおっしゃることが多いものです。
帰省や通院の付き添いなど、一緒に過ごす場面で、次のような変化がないか見てみてください。

  • ■ 見え方のサイン
  • 新聞や薬の説明書を読まなくなった、読み間違いが増えた
  • 段差でつまずく、物にぶつかることが増えた
  • テレビに近づいて見る、まぶしさを嫌がる
  • 眼鏡を作り直しても「見えにくい」と言う
  • ■ 聞こえのサイン
  • テレビの音量が以前より大きい
  • 聞き返しが増えた、見当違いの返事をする
  • 電話を避ける、呼びかけに気づかないことがある
  • 複数人での会話のとき、黙っていることが増えた

これらは、認知症の初期のサインと似て見えることがあります。
実際には「聞こえていなかっただけ」「見えていなかっただけ」というケースも少なくありません。
物忘れを疑う前に、目と耳の状態を確かめることが大切です。

この秋からできる5つの行動

「全部」ではなく、「1つ」からで大丈夫です。

  1. 目の愛護デーをきっかけに、眼科を受診する

    10月10日の「目の愛護デー」は、目を大切にするよう呼びかける日です。※6

    緑内障は40歳以上の20人に1人にみられるため、見えにくさを感じていなくても、40歳を過ぎたら一度は眼科での検査をおすすめします。※5

  2. 聞こえが気になったら、耳鼻咽喉科へ

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が委嘱する「補聴器相談医」は、耳の状態を診察して聴力検査を行い、難聴の種類を診断します。※7

    治せる難聴は治療し、補聴器が必要かどうかを判断して、使い方の指導や経過観察も行います。※7

  3. 健診結果で、血圧・LDLコレステロール・血糖を見直す

    特定健診は、40〜74歳の方が対象で、1年に1度の受診が呼びかけられています。※9

    「要再検査」「要治療」とあれば、放置せずにかかりつけ医へご相談ください。
    高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールは、中年期の管理が将来の認知症リスクに関わるとされる要因です。
    ご自身の健診結果を見直すことが、お子さま世代にとっての「予防」にもなります。

  4. 秋の散歩や地域の集まりで、体を動かし、人と会う

    運動不足と社会的孤立は、どちらも14の要因に含まれています。
    涼しくなったこの季節は、歩く習慣を作りやすい時期です。

    地域の体操教室や集まりの情報は、市区町村や地域包括支援センターに相談してみてください。
    地域包括支援センターは、高齢者の日常生活に関する困りごとの相談を受けています。※8

  5. 気分の落ち込みが続くときも、相談を

    うつ病も14の要因の一つです。

    気分の落ち込みや、楽しめない状態が続くときは、一人で抱えず、かかりつけ医や当センターへご相談ください。

気をつけたいこと・
誤解しやすいこと

14の要因は「原因」ではありません。
当てはまらなくても認知症になる方はいます。
ご本人やご家族を責める材料にはしないでください。

  • 「これを飲めば予防できる」と断定する商品や広告には、慎重になってください
  • すでに処方されている薬を、自己判断でやめたり変えたりしないでください
  • 補聴器や眼鏡は「もう遅い」ということはありません
  • 視力低下や社会的孤立は、高齢期にこそ取り組む要因とされています

よくあるご質問

Q. 補聴器をつければ、認知症にならないのですか?

「ならない」とは言えません。
一方で、難聴をそのままにしないことは、14の要因のひとつへの対応になります。

聞こえが良くなることで、会話や外出が増えるという生活面の利点も大きいと考えられます。

Q. 親はもう80代です。今から取り組む意味はありますか?

あります。
視力低下への対応や、人と会う機会を保つことは、高齢期に特に重要とされる要因です。
「できることから、無理なく」が基本です。

Q. 私は50代です。親のことだけでなく、自分のためにできることは?

14の要因のうち10は、中年期に取り組むものとして挙げられています。
特定健診を毎年受けて血圧・LDLコレステロール・血糖を把握すること、禁煙、飲酒を控えめにすること、歩く習慣を持つことなどです。

特別なことではなく、生活習慣病の予防と重なります。
親御さんと一緒に取り組むと、続けやすくなります。

Q. コレステロールの薬を飲めば、認知症は防げますか?

中年期に高LDLコレステロールがあることが、リスクの要因とされています。
ただし、特定の薬が認知症を防ぐと証明されたわけではありません。
薬を始めるか、どう管理するかは、かかりつけ医と相談して決めてください。

Q. 眼科や耳鼻咽喉科と、認知症疾患医療センターのどちらに行けばいいですか?

見え方・聞こえそのものの検査は、眼科・耳鼻咽喉科が担います。
物忘れや判断力の変化が気になる場合は、当センターへご相談ください。
必要に応じて、眼科・耳鼻咽喉科の受診もご案内します。

“年のせい”で終わらせない秋に

認知症は、「なったら終わり」でも、「何もできない」病気でもありません。

見え方と聞こえのケア、健診結果の見直し、人と会う機会──
そのどれもが、ご本人の毎日を豊かにしながら、将来のリスクにも向き合う行動です。

当センターでは、「物忘れが気になるけれど、どこに相談すればいいか分からない」という段階からご相談を承っています。
海老名市・座間市・綾瀬市の皆さまの「気になる」に、お応えします。

📞 認知症専用ダイヤル

046-204-8817

受付:月〜金 9:00〜18:00

おわりに

10月10日の目の愛護デーをきっかけに、
まずは一つ、始めてみませんか。

目と耳を大切にすることは、これからの毎日を、
ご本人らしく、豊かに過ごすための第一歩です。

■ 参考文献・ガイドライン

※本ページは、当認知症疾患医療センター長である尾崎聡理事長(神奈川県認知症サポート医)やえびな脳神経クリニックの岩田智則院長(日本認知症学会専門医・指導医)の監修に基づき、医学的根拠のある情報を分かりやすくお伝えすることを目的としています。
個別の症状については、必ず医療機関で診察をお受けください。
制度や統計は改正・更新される場合があります。公式情報をご確認ください。