認知症と運転免許 ─ 帰省前に知りたい、切り出し方と5つの備え

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認知症コラム #運転免許 #ご家族向け #帰省前に

「最近、親の運転が少し危なっかしい」
「でも、本人には言いにくい」──

久しぶりの帰省で、
実家の車に乗って、ふと不安を感じた。
そんなご家族は、少なくありません。

運転は、ご本人にとって
暮らしや自信と結びついていることが多いもの。
だからこそ、「順番」と「伝え方」が大切です。
今日は、免許更新の仕組みと、
ご家族ができる5つのことをお伝えします。

【この記事のポイント】
・運転の話は、帰省の前からご家族の間で準備しておくと、落ち着いて進めやすくなります。
・75歳以上の免許更新では認知機能検査があり、結果によっては医師の診断を受ける手続きがあります。
・ご家族だけで抱え込まず、警察の安全運転相談(#8080)や地域の認知症の相談窓口を使えます。

なぜ、帰省の前に
「運転」の話をしておくのか

帰省は、離れて暮らすご家族が、ご両親の暮らしを間近で見られる貴重な機会です。
助手席に座ると、普段は見えない運転の様子に気づくことがあります。

海老名市・座間市・綾瀬市をはじめ、通院や買い物に車が欠かせない地域は多くあります。
車がなくなると不便になる、という現実があるからこそ、「やめる・やめない」だけの話にしないことが大切です。

運転については、免許更新の際の検査や、医師の診断、警察の相談窓口など、あらかじめ決まっている仕組みがあります。
仕組みを知っておくと、ご家族だけで抱え込まず、第三者の力を借りながら話を進められます。

運転について話し合うことは、ご本人を否定することではありません。
「事故に遭ってほしくない」「長く安心して暮らしてほしい」という思いを、形にするための話し合いです。

運転に表れる、
気づきたい変化

次のような変化が重なるときは、運転を見直すきっかけかもしれません。
帰省時の同乗や、普段の様子の中で、さりげなく見てみてください。

  • ■ 運転中の様子
  • 慣れた道なのに、迷うことが増えた
  • 信号や標識を、見落とすことがある
  • 車線のはみ出しや、急ブレーキが増えた
  • 同乗者が「ヒヤッとした」と感じる場面が増えた
  • ■ 車や暮らしの様子
  • 車に、新しい傷やへこみが増えてきた
  • ヒヤリとした経験を、ご本人があまり覚えていない
  • 駐車や車庫入れに、以前より時間がかかる
  • 運転の話題になると、不機嫌になる・話をそらす

これらがあるからといって、認知症と決まるわけではありません。
年齢による見え方や反応の変化が、背景にある場合もあります。
原因を見分けるには、医師の診察が必要です。
まずは日付や場所とあわせて、様子を記録しておきましょう。

知っておきたい、
高齢ドライバーの免許更新の仕組み

高齢のドライバーには、免許更新の際に、次のような手続きが定められています。
以下は、警察庁が公表している情報にもとづいています。

  • ■ 更新時の主な流れ
  • 70歳以上:更新期間の満了日に70歳以上の方は、高齢者講習の受講が義務付けられています※1
  • 75歳以上:更新期間の満了日に75歳以上の方は、満了日より前の6か月以内に、認知機能検査を受けることが義務付けられています※1
  • 75歳以上で、一定の違反歴がある方:運転技能検査に合格しなければ、更新を受けられません※2

認知機能検査は、記憶力や判断力を測る検査です。
イラストを覚えて思い出す「手がかり再生」と、年月日・曜日・時間を答える「時間の見当識」の2項目を行います。※3

検査の点数に応じて、「認知症のおそれがある方」または「認知症のおそれがない方」と判定されます。
「認知症のおそれがある」と判定されると、公安委員会(警察)から連絡があり、
臨時適性検査または診断書提出命令により、医師の診断を受けることになります。※3

そして、医師により認知症と診断された場合は、聴聞等の手続を経たうえで、
免許の取消し、または効力の停止を受けることとなります。※3

認知機能検査は、医師の行う認知症の診断に代わるものではありません。
警察庁も、記憶力や判断力の状況を確認するための「簡易な手法」と説明しています。※3

検査の結果が出てから慌てるよりも、更新の前に、仕組みと相談先を知っておくことが、ご本人とご家族の安心につながります。

【この項目の出典】
※1 警察庁「令和5年版 警察白書」第2項 高齢運転者の交通事故防止対策の推進
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r05/honbun/html/z5532000.html(外部サイト)
※2 警察庁「運転技能検査について」
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ginoukensa.html(外部サイト)
※3 警察庁「認知機能検査について」
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html(外部サイト)
制度は改正される場合があります。更新の際は、警察庁や運転免許センターなどの公式情報をご確認ください。

帰省前から帰省後まで、
無理のない進め方

「帰省したら、いきなり運転の話をしなければ」と身構える必要はありません。
帰省の前・最中・後に分けて、少しずつ進める流れをご紹介します。

  • 帰省前

    ご家族で情報を共有し、相談先を控えておく

    兄弟姉妹など、関係するご家族と「運転が心配」という気持ちを共有しておきます。
    #8080や、ご本人のお住まいの地域の相談窓口の連絡先も、控えておくと安心です。

  • 帰省中

    助手席に乗って、様子をさりげなく見る

    ご本人の運転する車に同乗し、気づいたことをメモします。
    話し合いは、車の中ではなく、食後など落ち着いた時間に。
    責めずに「心配している」と気持ちから伝えてみましょう。

  • 帰省後

    専門の窓口に相談し、次の一歩を決める

    メモをもとに、#8080や、
    ご本人のお住まいの地域の窓口(地域包括支援センター・認知症疾患医療センターなど)に相談します。
    海老名市・座間市・綾瀬市など近隣の方は、当センターへもご相談ください。
    一度で結論を出さず、次に会うときや電話のタイミングで、話を続けましょう。

もちろん、このペースは目安です。順番が前後しても、時間がかかっても、問題ありません。

帰省前に、次の項目を確認しておくと、話し合いがスムーズになります。

  • 運転の様子について、気づいたことを日付つきでメモした
  • ご本人の免許証の更新期限を確認した
  • #8080と、ご本人のお住まいの地域の相談窓口の連絡先を控えた
  • ご家族の間で、誰が・いつ話すかを決めた
  • 運転をやめた場合の移動手段を、いくつか考えてみた

ご家族ができる、5つのこと

すべてを一度にする必要はありません。「できそうなもの」から1つずつで大丈夫です。

  1. 運転の様子を、日付・場所・状況とあわせてメモする

    「いつ、どこで、何があったか」を短く残すだけで十分です。
    「先月、駐車場で車をこすった」「帰り道で一度迷った」など、事実だけを書いておきます。

    具体的な記録があると、ご本人にも落ち着いて話しやすくなります。警察や医師へ相談するときにも、そのまま役立ちます。

  2. 更新を待たずに、医療機関や専門の窓口に相談する

    診断書を求められる前に、受診して状態を確かめておくこともできます。
    物忘れや判断力の変化が気になる場合は、
    ご本人のお住まいの地域の認知症疾患医療センターや地域包括支援センターへご相談ください。
    海老名市・座間市・綾瀬市など近隣の方は、当センター(神奈川県指定 認知症疾患医療センター・連携型)もご利用いただけます。

    当センターでは、ご家族だけのご相談も受け付けています。「本人にはまだ話していない」という段階でも、まずはお電話ください。

  3. 警察の「安全運転相談」を使う

    運転に不安のある方やそのご家族は、全国共通の安全運転相談ダイヤル「#8080」に相談できます。
    看護師などの医療系専門職員をはじめ、専門知識のある職員が対応する窓口です。

    神奈川県警察の案内では、安全運転相談ダイヤルの受付は月〜金曜日の午前8時30分〜午後5時です(祝日・年末年始を除く)。
    運転の継続に必要な助言や、自主返納制度の説明も受けられます。

  4. 話し合いは、「責めない」ことから始める

    「危ないからやめて」と伝えるだけでは、ご本人は否定されたと感じやすいものです。
    「心配している」「事故に遭ってほしくない」と、ご家族の気持ちから伝えてみましょう。

    一度で結論を出さず、時間をかけて少しずつ話すことが大切です。
    ご本人が信頼している方や、かかりつけ医から伝えてもらう方法もあります。

  5. 運転をやめた後の「移動手段」も、一緒に考える

    通院や買い物の手段は、ご家族の送迎、公共交通機関、タクシーの利用、
    お住まいの自治体の移動支援(ある場合)などが選択肢です。
    内容は自治体や状況によって異なるため、地域包括支援センターなどで確認できます。
    介護保険サービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーにも相談できます。

    「運転をやめても、出かけられる」と見通しが立つと、ご本人の不安は和らぎやすくなります。

話し合いのときの、
伝え方のヒント

同じ内容でも、言い方ひとつで、ご本人の受け止め方は変わります。
次のような言い換えを、参考にしてみてください。

  • ■ 伝え方の言い換え例
  • 「危ないからやめて」→「あなたに何かあったら心配なんだ」
  • 「もう運転は無理だよ」→「最近ちょっとヒヤッとした場面があって、一緒に考えたい」
  • 「免許を返して」→「どうしたら安心して出かけられるか、一緒に探そう」

話し合いの場所は、運転中や車の中ではなく、落ち着いて話せる時間と場所を選びましょう。
ご本人が運転を大切にしてきた気持ちを、まず受け止めることが第一歩です。

運転をやめる・見直すときの
選択肢

「続ける」か「やめる」かの二択ではなく、その間にも選択肢があります。

  • ■ 運転免許の自主返納
  • 身体機能の低下などを理由に、申請により運転免許を取り消し、免許証を返納できます※4
  • 返納後5年以内に申請すると、「運転経歴証明書」の交付を受けられます※4
  • ■ 運転できる車を限定する
  • 令和4年5月から、運転できる車をサポートカーに限定するなどの条件を、免許に付けることができるようになりました※5
  • 返納の前の、中間的な選択肢のひとつです

【この項目の出典】
※4 警察庁「運転免許証の自主返納について」
https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/jishuhennou.html(外部サイト)
※5 内閣府「令和6年版 交通安全白書」第2節 高齢運転者による交通事故防止のための取組
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r06kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_2_2.html(外部サイト)
制度は改正される場合があります。申請の方法や条件は、お住まいの都道府県警察(運転免許センター等)の公式情報をご確認ください。

どの選択が合うかは、ご本人の体の状態や暮らし方、お住まいの環境によって異なります。
迷ったときは、#8080や、お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

運転をやめた後に、
気をつけたいこと

運転をやめると、外出の機会が減って、人と会う機会が少なくなることがあります。

社会的孤立は、認知症のリスク要因のひとつとして国際的な報告にも挙げられています。
詳しくは、「認知症リスクを下げる14の要因」のコラムでもご紹介しています。

運転をやめることだけに目を向けず、「出かける楽しみ」をどう保つかも、あわせて考えておきましょう。
地域の体操教室や通いの場、認知症カフェなど、歩いて行ける場所を探しておくのもひとつの方法です。

気をつけたいこと・
誤解しやすいこと

免許の取消しや停止は、診断だけで決まるのではなく、警察(公安委員会)の手続きを経て判断されます。
ご本人やご家族だけで結論を出さず、専門の窓口を使いながら、安全な方法を一緒に考えましょう。

  • ご本人に黙って、車や鍵を処分することは避けてください。信頼関係が損なわれることがあります。
  • 「認知症だから」と決めつけて話さないでください。まずは様子を観察し、必要なら受診を。
  • 一度の話し合いで、結論を急がないでください。何度かに分けて、時間をかけて進めましょう。
  • ご家族だけで抱え込まないでください。警察の相談窓口や、お住まいの地域の認知症の相談窓口を頼って大丈夫です。

よくあるご質問

Q. 認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定されたら、どうなりますか?

警察庁の案内では、公安委員会(警察)から連絡があり、
臨時適性検査または診断書提出命令により、医師の診断を受けることになります。

そのうえで、認知症であると診断された場合は、聴聞等の手続を経て、免許の取消しまたは効力の停止となります。
なお、認知機能検査は、医師の行う認知症の診断や医療検査に代わるものではない、簡易な手法とされています。
詳しくは、警察庁「認知機能検査について」(外部サイト)をご確認ください。

Q. 本人が運転をやめることに納得しません。どうすればいいですか?

一度で説得しようとせず、まずは#8080などの第三者にも相談してみてください。

ご本人の気持ちを聞きながら、少しずつ進める方法を一緒に考えます。
かかりつけ医など、ご本人が信頼している方から伝えてもらう方法もあります。

Q. まだ診断を受けていません。本人に黙って相談してもいいですか?

はい、ご家族のみのご相談も受け付けています。

「本人には内緒で相談したい」という段階でも、まずは認知症専用ダイヤルへお電話ください。

Q. 受診すると、どれくらいの費用や時間がかかりますか?

初診当日は、診察・MRI・心理検査などを行い、所要時間は約2〜3時間です。
費用の目安は、1割負担で約3,500円、2割負担で約7,000円です(検査内容や処方薬により変動する場合があります)。

初診から約1〜2週間後に、再診・結果のご説明を行います。
詳しくは「初めての方へ」のページをご覧ください。

Q. #8080と、認知症疾患医療センターは、どう使い分ければいいですか?

運転の継続に必要な助言や、自主返納など免許に関する手続きの相談は、警察の安全運転相談が窓口です。

物忘れや判断力の変化など、医学的な診断や相談は、
認知症疾患医療センターなどの医療機関が対応します(当センターも、その一つです)。
どちらか一方ではなく、状況に応じて両方を使っていただいて大丈夫です。

Q. 免許を返納すると、何か証明になるものはありますか?

返納後5年以内に申請すると、「運転経歴証明書」の交付を受けられます。

申請の手続きや、返納者への各種支援の内容は、警察の窓口や自治体によって異なります。
#8080や、お住まいの地域の警察署でご確認ください。

Q. 海老名市・座間市・綾瀬市以外に住んでいますが、相談できますか?

お電話でのご相談は、お住まいの地域にかかわらずお受けしています。

ただ、遠方の場合は、通院のしやすさや、診断後に地域の支援とつながることを考えて、お住まいの自治体の認知症疾患医療センターや地域包括支援センターを探すことをおすすめしています。
神奈川県の「認知症の相談窓口」(外部サイト)に、県内の窓口が掲載されています。

ご家族だけで、抱え込まないでください

運転の話は、ご家族にとって、とても切り出しにくいものです。
だからこそ、仕組みと相談先を知っておくことが、大きな助けになります。

当センターでは、「運転が心配だけれど、まだ受診するほどではないかも」という段階からのご相談も承っています。
診断書が必要になったときの流れについても、相談事例でご紹介しています。

【ご相談先の探し方】
当センターは海老名市にあり、海老名市・座間市・綾瀬市など近隣にお住まいの方からのご相談を多くいただいています。

遠方にお住まいの場合は、通いやすさや、その後の地域の支援との連携を考えて、お住まいの自治体にある認知症疾患医療センターや地域包括支援センターを探してみることをおすすめします。神奈川県の「認知症の相談窓口」(外部サイト)に、県内の窓口が掲載されています。

📞 認知症専用ダイヤル

046-204-8817

受付:月〜金 9:00〜18:00

おわりに

運転をやめることは、ご本人の暮らしを守る選択のひとつです。
そして、ご本人の誇りを大切にしながら進めることも、同じくらい大切です。

次の帰省をきっかけに、
まずは様子をメモして、
一歩目の相談から始めてみませんか。

■ 参考文献・ガイドライン

※本ページは、当認知症疾患医療センター長である尾崎聡理事長(神奈川県認知症サポート医)やえびな脳神経クリニックの岩田智則院長(日本認知症学会専門医・指導医)の監修に基づき、医学的根拠のある情報を分かりやすくお伝えすることを目的としています。
個別の症状については、必ず医療機関で診察をお受けください。