てんかん
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えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
日本脳卒中学会(評議員)
日本血管内治療学会(評議員)
日本脳循環代謝学会(評議員)
米国心臓協会国際フェロー(Fellow of AHA・脳卒中部門)
日本神経学会専門医/指導医
日本内科学会総合内科専門医/指導医
日本脳卒中学会専門医指導医
日本認知症学会専門医指導医
厚生労働省認定外国人医師臨床修練指導医
「てんかん」という言葉は、過去には“癲癇(てんかん)”とも書かれ、一般には「発作を起こす病気」=慢性疾患として知られています。
実際にはさまざまなタイプがあり、症状や経過も人それぞれ異なる病気です。
このページでは、脳神経内科医の視点からてんかんの症状・診断・治療まで詳しく解説します。


てんかんの症状
てんかんの発作症状は、多種多様で「典型的な症状=こうです」というものではありませんが、大きく以下の3種類に分けられます。
発作のタイプ(焦点起始発作/全般起始発作/起始不明発作)によって出る症状が異なります。
発作が起きた時の「時間・状況・どんな動き・意識の状態だったか」を記録しておくことが、診断・治療を進める上で極めて重要です。
また、けいれんを伴わないてんかん発作も珍しくありません。
焦点(部分)発作
脳の一部に異常興奮が生じるタイプで、てんかん発作の中で最も多くみられる発作です。
● 意識が保たれる焦点発作(単純部分発作)
意識ははっきりしている状態で起こる発作。
- 手足がピクピク動く
- 身体の一部のしびれ、違和感
- 特定の感覚(におい・味・視覚の異常)が突然現れることも
● 意識がぼんやりする焦点発作(複雑部分発作)
呼びかけに反応しにくくなる発作。
- ぼんやりして固まる
- 口をもぐもぐする、服を触るなどの自動症
- 発作後に数分間の混乱が残ることもある
● 焦点発作から始まり全身に広がる発作(二次性全般化発作)
最初は脳の一部で始まり、脳全体に広がることで全身けいれん(強直間代発作) に移行します。
全般起始発作
脳の広い範囲、または脳全体に一斉に異常な電気活動が起こる発作です。
発作が 最初から脳全体で一斉に起こるタイプ です。
意識の変化を伴うことが多く、症状は発作の種類によって異なります。
● 強直間代発作(全身けいれん)
- 体が固くなる(強直)→ 全身が大きく震える(間代)
- 倒れたり、舌を噛むことがある
- 発作後は眠気やだるさが強く出ることが多い
● 欠神発作
- 数秒〜十数秒「動きが止まる」
- 目が宙を見てぼんやりする
- 小児に多い発作で、周囲から“ぼんやりしているだけ”に見えることも
● ミオクロニー発作
- 体や腕が「ピクッ」と一瞬跳ねる
- 朝起き抜けに出やすい
- 思春期に発症するタイプ(JME:若年性ミオクロニーてんかん)でもよく見られる
起始不明発作(発作の始まりが観察できなかったタイプ)
発作が「どこから始まったか」が分からない場合につけられる分類 です。
次のようなケースでよく用いられます。
- 周囲の人が発作の途中から気づいた
- 夜間など、誰にも見られていない状況で起こった
- 動画や医療者による観察が間に合わず、最初の状態が不明
- 発作の種類が焦点性か全般性か判断できるだけの情報が揃わない
症状としては、全身けいれんのように見えることもあれば、意識がなくなって倒れるだけに見える など、発作型の判断が難しい形も含まれます。
2017年に国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)より発表されたてんかん分類では、①発作型を分類し、②てんかん病型を決め、③てんかん症候群の診断を行う、という3段階で診断します(図1)。
てんかんの診断


現在の定義では、単発の発作ではなく 「24時間以上の間隔で2回以上の自発的なてんかん発作」または 「1回けいれん発作が起きただけでも、その後10年間のあいだに再び発作が起こる可能性が高い状態」 である場合に「てんかん」と診断されます。
てんかんの診断では、国内ガイドラインに記載があるように問診・家族歴・発作時の状況聴取が重要な第一歩とされています。
てんかんの診断は、その他の疾患との鑑別診断を行い、問診・発作状況の確認・脳波検査・画像検査(MRI)を組み合わせて行います。
問診(発作時の状況)
発作状況の聴取(何をしていたか、意識どうだったか、どのくらい続いたかなど)をご本人が覚えていなくても、家族・周囲の人からの情報が重要です。
- どんな動きをしたか
- どれくらい続いたか
- 発作後の様子(混乱・眠気など)
脳波検査(EEG)
脳波検査(てんかん波が見られるか、発作時の活動を捉えるか)を行います。
脳波検査では脳の電気活動を可視化して、てんかん性放電の有無を調べます。
日本てんかん学会でも「最も重要な検査の一つ」としています。
画像検査


頭部の画像検査(MRIやCT)では、脳の形や構造に異常がないかを詳しく確認します。
これにより、脳腫瘍や過去の脳出血のあと、海馬硬化症、脳の発達の異常など、てんかんの原因となりうる病変を調べます。
必要に応じて、核医学検査(脳の働きを画像で見る検査)を追加し、発作が起こりやすい脳の部位をより詳しく評価することもあります。
血液検査
代謝異常・感染症など、発作の誘因となる要因もチェックします。
血液・代謝検査で発作を誘発する因子(低血糖・電解質異常など)を除外します。
診断は上記のような検査結果の総合判断で行われ、一度の検査で分からなくても繰り返し検査することがあります。
診断が確定したら、どのタイプのてんかんなのか(発作の起こり方や特徴)を整理し、治療計画を立てます。
当院で行える検査・診断
えびな脳神経クリニックでは問診の上、下記の中から必要な検査を行い、原因を特定し適切な治療をご提案いたします。
MRI


CT


脳波


血液検査


心電図


超音波検査


・・など
検査によって「てんかんではなかった」「今すぐ治療が必要な状態ではない」と分かるだけでも、日常生活への不安は大きく軽減されます。
気になる症状がある場合は、「何もなかったと確認するための検査」としても、どうぞお気軽にご相談ください。
てんかんの分類
てんかんはその原因・発作型・年齢発症などの観点から多様に分類されており、治療戦略もそれぞれ異なります。
国内でも国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)の分類に準じています。
てんかんは、発作型を分類した後、診察や検査で得られたさまざまな情報に基づいて「焦点てんかん(部分てんかん)」、「全般てんかん」、「全般焦点合併てんかん」、「病型不明てんかん」のいずれかのてんかん病型に分けられます。
さらに、発作の内容のほか、発症年齢や発作を誘導する要因、併存症などを考慮して、「てんかん症候群」が診断されます。
正確なてんかんの診断は、治療とその後の経過の見通しに重要な意味を持つため、非常に大切です。
てんかんの内科的治療


抗てんかん薬による治療は、患者さん一人ひとりの発作のタイプや体質に合わせて丁寧に行われます。
初めての発作であっても、脳波検査や画像検査などから再発のリスクが高いと判断される場合には、早期に薬物療法を開始することが推奨されています。
薬の選択は、「部分てんかんか、全般てんかんか」といった発作のタイプによって異なります。
発作を確実に抑えるためには、「その人に合う薬を正確に見極めること」が何より重要です。
処方される薬の種類は多数あり、発作型(表1)やてんかん病型(CQ3-2 / 3-3)によって異なります。
また副作用の出方・合併症の有無(高齢、妊娠、精神疾患など)に応じて、適切な薬を選びます。
特に、以下の方は薬の代謝や安全性に細心の注意が必要です。
- 高齢の方
- 妊娠可能年齢の女性
- 糖尿病や肝機能障害などの合併症をお持ちの方
治療中は、血中薬物濃度の測定や併用薬との相互作用、副作用(めまい、発疹、骨密度低下など)を定期的に確認し、飲酒・睡眠不足など生活習慣による影響にも配慮しながら調整していきます。
表1 新規発症転換の選択役と慎重投与すべき薬剤
| 発作型 | 第一選択薬 | 第一選択薬 | 第一選択薬 |
|---|---|---|---|
| 単純部分発作 複雑部分発作 | カルバマゼピン、モラトリギニン、レペチラセラム、ゾニサミド、トピラマート | フェニトイン、バルブロ酸、クロバザム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ペランパネル、ラコサミド | |
| 強直間代発作 間代発作 | バルプロ酸(妊娠可能年齢女性は除く) | ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニセミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネル | フェニトイン |
| 欠神発作 | バルプロ酸、エトスクシミド | ラモトリギン | カルバマゼピン、ババペンチン、フェニトイン |
| ミオクロニー発作 | バルプロ酸、クロナゼバム | レペチラセタム、トピラマート、ピラセタム、フェノバルビタール、クロバザム | カルバマゼピン、ガバペンチン、フェニトイン |
| 強直発作 脱力発作 | バルプロ酸 | ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート | カルバマセピン、ガバペンチン |
新規発症の部分てんかんでの選択薬
第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセラム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨されます。
第二選択薬として、フェニトイン、バルプロ酸、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ラコサミド、ペランパネルが推奨されます。
新規発症の全般てんかんでの選択薬
全般性強直間代発作に対して、バルプロ酸が第一選択薬として推奨されます。
第二選択役として、ラモトリギン、レペリタセタム、トピラマート、ボニサミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルが推奨されます。
妊娠可能年齢女性では、バルプロ酸以外での薬剤治療を優先します。
欠神発作では、バルプロ酸、エトスクシミド、ついでラモチリギンが推奨されます。
ミオクロニー発作では、バルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマートが推奨されます。
服薬を続けることが重要
薬を飲み忘れたり自己判断で中止したりすると、発作が再発・重症化する危険性があります。
ガイドラインでは、発作が消失してもすぐに薬をやめるのではなく、少なくとも数年間は継続治療を行い、その後、医師の指導のもとで慎重に減量・中止を検討することが推奨されています。
治療開始後は、定期的な診察と検査で発作の有無や副作用を評価し、薬で十分に発作が抑えられているかを確認します。
もし効果が不十分な場合は、薬の種類や用量を見直したり、外科的治療や神経刺激療法など次の治療ステップを検討します。
このように、薬物療法は「てんかんを抑える」だけでなく、患者さんの生活の質を守るために、長期的な視点で調整と見直しを続けるプロセスでもあります。
てんかんの外科的治療


薬剤治療だけでは発作が十分に抑えられない「薬剤治療抵抗性てんかん」の患者さんに対して、外科的治療が検討されます。
- 内側側頭葉てんかん
- 器質病変がある焦点てんかん(部分てんかん)
- 器質病変を認めない焦点てんかん(部分てんかん)
- 片側半球の広範な病変による焦点てんかん
- 脱力発作を伴う薬剤抵抗性てんかん
上記のようなタイプは、条件を満たせば手術治療の対象となることが、日本てんかん学会ガイドラインでも示されています。
てんかんが日常生活に及ぼす影響
てんかんは、発作そのものだけでなく、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼす可能性がある病気です。
たとえば仕事や学校生活では、発作によって一時的に集中力が途切れたり、学習や業務を中断せざるを得ないことがあります。
さらに、発作のコントロール状況によっては車の運転に制限がかかる場合もあり、職業選択や通勤方法に影響することも少なくありません。
安全面での注意
発作の最中に転倒してケガをしたり、入浴中に意識を失って溺れる危険があるため、生活環境を工夫することが大切です。
たとえば、以下のような日常の小さな工夫が、事故の予防につながります。
- 浴室では、入浴前に家族に声をかけてから入る
- キッチンでは、高温の油や重い鍋を扱う時間をできるだけ短くする
このような配慮を重ねることで、日常生活の安全性を高めることができます。
精神的な面での注意
発作に対する不安や、周囲の理解不足によるストレス、また発作後の強い疲労感などから、気分の落ち込みやうつ症状が見られる方もいます。
こうした心理的な負担に対しては、医療スタッフだけでなく、家族や職場・学校など周囲の理解と支援が重要です。
薬の副作用・生活習慣への注意
抗てんかん薬の中には、眠気や集中力の低下、骨密度の低下などを起こすものもあり、服用量や他の薬との併用を慎重に調整する必要があります。
定期的な血液検査や骨密度検査を行い、体の状態を確認しながら治療を続けることが推奨されます。
また、発作を誘発する要因として、以下が知られています。
- 睡眠不足
- 過度なストレス
- アルコール摂取
- 強い光の刺激(フラッシュライトなど)
日常生活では、十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけることが、発作の再発予防につながります。
治療の目的は「生活の質」を守ること
このように、てんかんの治療は単に「発作を止めること」だけが目的ではありません。
発作をできるだけ減らしながら、仕事や家庭、学校といった生活の質(QOL)を保ち、自分らしく安心して暮らせる状態を支えていくことが、治療の大きな目的です。
いずれの治療を選択する場合も、以下の要素を総合的に判断することが重要です。
- 発作の種類
- 発作が起こる部位
- MRIや脳波などの検査結果
- これまでの薬物治療の効果
医師と相談しながら、ご自身の生活に合った治療方針を一緒に考えていきましょう。
院長からひとこと



えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
当院の特徴
脳波・MRI・CTで発作の原因を確認
脳波検査に加え、MRI・CTで原因となる病気がないか確認します。
夜・土日診療で通いやすい
平日21時/土曜18時/日曜13時まで診療。 ※初診は診療終了の1時間前まで
海老名駅直結で徒歩1分
ViNA GARDENS PERCH 6階。
体調が不安定な時期でも、移動の負担を軽減できます。
「てんかんかも」と決めつける必要はありません。
まずは症状と検査の相談から始めてみませんか?
てんかんに関するQ&A
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当院では、てんかん診療において「発作をゼロにする」ことだけを目標にせず、患者さん一人ひとりの生活を見据えたサポートを大切にしています。
発作後のリスク管理やお薬の選び方、生活環境の調整まで含めて、必要に応じて外科的治療も視野に入れた治療プランをご提案します。
「発作が続く」「薬が効きにくい」「日常生活に支障がある」と感じたら、早めにご相談ください。
適切な診断・治療・支援で、てんかんがあっても安心して暮らせる未来を一緒に考えていきましょう。