認知症

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理事長 尾﨑 聡

医療法人社団NALU
理事長 尾﨑 聡

日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
日本脳神経血管内治療学会 脳血管内治療専門医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
認知症サポート医
医学博士

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「家族が認知症になったかもしれない」
「認知症になるとどのような症状が出るの?」

認知症は決して珍しい病気ではありません。なんとなく「物忘れが多くなる」「外で迷子になる」などのイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。

今回は、具体的にどのような症状が出るのか、どのようにして治療を行っていくのかなど認知症について詳しく解説します。

認知症とは

認知症とは、脳の機能が低下することで認知機能が低下した状態のことです。認知機能が低下する原因にはさまざまなものがあり、それらをまとめて認知症と呼んでいます。2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になるといわれていることから、とても身近な病気だといえるでしょう。

認知症で見られる症状

認知症では、大きくわけて「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つの症状が見られます。

中核症状

中核症状とは、記憶障害や理解力・判断力が低下することで起こる症状のことです。

  • 数分前のことが思い出せない
  • ものをしまった場所をすぐに忘れる
  • 何個も同じ商品を買ってくる
  • 今日の日付や曜日がわからない
  • 季節に適した服装ができなくなる
  • 人が話を理解するのが苦手になる
  • 掃除や料理の段取りがわからなくなる
  • 道に迷うことが増える
  • 失禁が増える

行動・心理症状

行動・心理症状とは、中核症状にともなって現れる精神的な症状のことです。必ずしも起こるものではありません。生活環境や認知症の方との対応方法次第では、症状が現れないこともあります。

  • 不安な気持ちが強くなる
  • うつ状態になる
  • 怒りっぽくなる
  • 幻視が見える
  • なくしたものを「盗られた」と思い込む「もの盗られ妄想」が出る

認知症と物忘れの違い

認知症と老化による物忘れには、大きな違いがあります。体験したことをそのまますっかり忘れてしまう場合は認知症、一部だけ忘れてしまうのは単なる老化による物忘れです。たとえば認知症の方はご飯を食べたこと自体の記憶がなくなりますが、物忘れの場合は食べたことは覚えており何を食べたかだけを忘れてしまいます。

また、物忘れしている自覚が認知症の方にはありません。そのため、何度も同じ質問をされることに対して「さっきも答えたでしょ!」と怒っても、「なぜ急に怒られたのだろう?」と思われてしまいます。

認知症老化による物忘れ
物忘れの特徴体験したことそのものを忘れる体験したことの一部を忘れる
物忘れの自覚自覚はない自覚はある
症状の進行進行する徐々にしか進行しない
物がなくなっと時の行動誰かに盗られたと思う自分で探して見つける

認知症の種類と特徴

認知症にはいくつか種類があります。ここでは、とくによく見られる4つの種類について見ていきましょう。

アルツハイマー型認知症

認知症のうち、約70%はアルツハイマー型認知症によるものです。アミロイドβというタンパク質が蓄積したり、学習・記憶に関与しているアセチルコリンの量が低下したりすることで発症します。物忘れから始まり、少しずつ症状が進行していくことが基本です。失語や運動能力の低下が見られ、寝たきりになる方もいます。 

→アルツハイマー型認知症について詳しく知りたい方はこちら

血管性認知症

脳梗塞や脳出血などによって脳がダメージを受けることにより発症する認知症です。脳のどの部位が障害を受けるかによって現れる症状が異なります。「まだら認知症」といって、できることとできないことに差が見られやすいことが特徴です。同時にアルツハイマー型認知症を発症することもあります。

→血管性認知症について詳しく知りたい方はこちら

レビー小体型認知症

レビー小体というタンパク質が蓄積することで発症する認知症です。認知機能の低下以外に、幻視や体を動かしづらくなるパーキンソン症状がよく見られます。認知機能の低下より先にパーキンソン症状が先に目立つようになることもあるため、認知症だと気づかれにくい場合もあるでしょう。

→レビー小体認知症について詳しく知りたい方はこちら

前頭側頭型認知症

前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞が障害されることで起こる認知症です。タウ蛋白やTDP-43と呼ばれるタンパク質が凝集することが原因だと考えられています。万引きをしたり何度も同じ行動をくり返したり、時には暴力をふるったりなどの症状が代表的です。自発的な発語が見られなくなり、会話がオウム返しになることもあります。

前頭側頭型認知症について詳しく知りたい方はこちら

認知症の治療方法

正常圧水頭症や甲状腺機能低下症などが原因で起こる認知症は、原因となる疾患を治療することで認知症を根本的に治療できます。しかし、アルツハイマー型認知症や血管性認知症などには、根本的な治療方法がありません。そのため、症状の進行を抑えていくことが基本です。

薬物治療

アルツハイマー型認知症には、アセチルコリンの分解を抑えるコリンエステラーゼ阻害薬や、神経細胞の障害を抑えるメマンチンが一般的に使用されます。

血管性認知症は、再発を防ぐために血液をサラサラにする薬を使ったり、高血圧や脂質異常症の治療を行うことが基本です。

レビー小体認知症では、アセチルコリンの分解を抑えるドネペジルが治療薬として適応をもっています。

前頭側頭型認知症の治療薬は今のところありません。SSRIという抗うつ薬の一つが有効なのではと考えられています。

非薬物治療

認知症の種類や症状によっては、薬を使わない方法も有効です。とくに行動・心理症状に対しては、非薬物治療を行うことで症状の軽減が期待できます。運動療法や音楽療法、認知行動療法などが代表的です。

認知症の方の対応を行うときに心がけたいこと

ご家族の方が認知症になり、毎日大変な思いをしながら過ごしている方も多いでしょう。数分おきに何度も同じことを聞かれたり、盗人扱いされたりすると、介護している側のメンタルも徐々に弱ってしまいます。しかし、認知症の方との対応を少し変えるだけでも症状が緩和され、お互いが楽に過ごせるようになることも少なくありません。

話をしっかり聞いてあげる

同じことを何度も聞かれると、うんざりするかもしれません。しかし、認知症の方にとって、その質問は「初めての質問」なのです。「何度同じことを聞くの」と怒りをあらわにしてしまうと、「私のことが嫌いなのかな?」と思い、塞ぎ込みがちになってうつ状態になってしまうケースもあります。同じ話にもしっかりと耳を傾け、必要に応じて「代わりに私がしっかり覚えておくので大丈夫ですよ」と声をかえてあげてください。すると、安心感を覚えて質問する回数が減ることがあります。

ご本人の発言を否定しない

「あそこに犬がいる」「人がいる」と、何もない空間を指して言われても、「そうだね、犬がいますね」など、話を合わせましょう。本人にとっては、そこに犬や人が実際にいるように見えているのです。畳んだタオルや干している服が犬や人に見えていることもあるので、実際にそれらを触らせて「違う」ということを認識させるのもよいでしょう。

ご本人のも「記憶しとかないと」と強く意識していることを認識する

認知症の方はなにもわかっていない、と思っていませんか?実は「あのことを忘れないようにしよう」と必死に覚えようとしています。忘れてはいけないと強く意識しているからこそ、何度も何度も同じことを聞いてしまうのです。常に「あれはちゃんとやったっけ」「話したっけ」と不安な気持ちでいっぱいだということをわかってあげましょう。

過度なアルコールやタバコの摂取を控える

アルコールやタバコの過剰な摂取は頭痛の原因になることがあります。適量に抑えるように心がけましょう。

ー 認知症に関するQ&A ー

Q:軽度認知障害(MCI)とはなんですか?
A:軽度認知障害認知症とまではいかないものの物忘れの症状が出ている状態のことです。認知症のグレーゾーンや軽度認知障害とも呼ばれており、年間10~15%の方が認知症に移行しているといわれています。
Q:認知症は高齢者のみが発症する病気ですか?
A:高齢者に多い病気ですが、若い方でも発症します。少し古いデータですが、厚生労働省が2009年に調べた調査によると、65歳未満で認知症を発症している方は全国に3.78万人いると推計されているのです。働き盛りの年齢で発症することもあるので、何かおかしいなと感じたら早めに受診してください。
Q:認知症の予防法はありますか?
A:炭水化物ばかりを摂らず適度なカロリー摂取を心がけること、適切な体重を維持すること、運動を積極的に行うことなどが認知症の予防に効果があると言われています。人との関わりがなくなると認知機能は低下しやすくなることから、社会活動や余暇活動を行うのもよいでしょう。
Q:痴呆症との違いはなんですか?
A:認知症と痴呆症は同じものです。昔は痴呆症と呼ばれていましたが、「痴呆」という言葉には人をさげすんだり馬鹿にしたりする意味もあるため認知症へと呼び名が変更されました。

院長からひと言

認知症とは、認知機能の低下した状態のことです。物忘れがひどくなり、認知症になると人生が終わりだと思われている方も多いでしょう。しかし、認知症と診断されても職場の責任者として活躍していたり、趣味を楽しみながら生活を続けたりしている方も大勢います。早めに治療することで症状の進行を抑えることができますので、気になることがあれば早めに受診するようにしてください。当院では通所リハビリテーションも運営しており、ご本人さまはもちろん、介護をするご家族の方の支えとなる治療を心がけております。