「ふるえ」の原因と治療法〜本態性振戦からパーキンソン病まで詳しく解説〜
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この記事を書いた人

えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
日本脳卒中学会(評議員)
日本血管内治療学会(評議員)
日本脳循環代謝学会(評議員)
米国心臓協会国際フェロー(Fellow of AHA・脳卒中部門)
日本神経学会専門医/指導医
日本内科学会総合内科専門医/指導医
日本脳卒中学会専門医指導医
日本認知症学会専門医指導医
厚生労働省認定外国人医師臨床修練指導医
今回は多くの方が経験したことのある「ふるえ」について、その原因や治療法を詳しく解説していきます。
年齢を重ねるにつれて「手がふるえる」「字を書くときにふるえる」といった症状を感じる方も多いのではないでしょうか。
ふるえは原因がさまざま。中には早めの受診が必要なものもあります。
目次
ふるえとは何か


「ふるえ」は医学用語で「振戦」と呼ばれる、不随意運動(自分の意志とは関係なく起こる動き)の一種です。
主に手や腕に現れますが、頭・足・あごなど、全身のどこにでも起こる可能性があります。
「ちょっと震えるだけだから様子を見ている」という方も多いのですが、ふるえは生活の質を大きく下げるだけでなく、脳や神経の病気のサインであることもあります。
ふるえの種類
ふるえには主に4つの種類があります。
1)安静時振戦
安静時振戦は、体を動かしていないときに現れるふるえのことです。
主に手や足、あごなどに見られ、意図的に体を動かしていない状態でも勝手に震えが生じます。
この種の振戦の特徴として、動作を始めると一時的に減弱または消失することがあります。
安静時振戦は通常、片側から始まることが多く、徐々に反対側にも広がっていきます。
精神的なストレスや緊張で症状が悪化することもあります。
2)姿勢時振戦
姿勢時振戦は、特定の姿勢を保持しているときに現れるふるえのことです。
典型的な例としては、両腕を前に伸ばした状態や、手を肩の高さまで上げた状態で発生します。
この種の振戦は、安静にしているときには見られず、姿勢を維持しようとすると主に上肢に出現します。
振動の速さは比較的速く、細かい震えとして観察されることが多いです。
3)動作時振戦
動作時振戦は、体を動かしている最中に現れるふるえのことです。
特に、目的を持った動作を行う際に顕著になります。
例えば、コップを取ろうとしたり、ボタンを掛けようとしたりする時に震えが生じます。
この振戦の特徴は、動作を開始してから終了するまでの間、不規則なふるえが続くことです。
小脳病変で生じ動作が終わると、ふるえも収まります。
4)企図振戦
手や足を使って何かをしようとするときに、その手足にふるえが出始めます。
例えば、コップを取ろうとしてコップに手を近づけば近づくほど、ふるえは大きくなっていきます。
コップに手が届く直前が最もふるえが激しくなります。
その姿勢を続けている間は、ふるえは止まりません。
このふるえは、大きめで不規則な揺れ方をします。
主に『小脳』に問題があるときに起こることが多いのですが、ふるえの強さと小脳の症状の程度は必ずしも比例しません。
ふるえの主な原因疾患
ふるえは様々な疾患によって引き起こされる可能性があります。
生理的振戦やパーキンソン病や本態性振戦をはじめ、甲状腺機能亢進症、不安障害、脳卒中後遺症など、多岐にわたる原因疾患が存在します。
1)生理的振戦
生理的振戦は、健康な人でも経験する正常な生理現象としてのふるえです。
姿勢時に生理的にみられるふるえが増強され、速さが 8~12 Hz程度の振戦で、通常は肢位保持や動作遂行中に著明となります。
主に手指末梢にみられ、精神的緊張や疲労時などには増強する傾向があります。
生理的振戦は病的なものではないため、特別な治療は必要ありません。
ただし、ストレス管理や十分な休息、バランスの取れた食事など、健康的なライフスタイルを心がけることで軽減できる場合があります。
2)本能的振戦
ふるえの原因として最も多いタイプです。
特徴は以下の通りです:
・安静時にはふるえがなく、姿勢を保つときや動作時に現れる
・手が同時にふるえることが多い
・年齢とともに発症リスクが高まる(50〜70代に多い)
・遺伝的な要因が強い
この振戦の特徴は、年齢とともに発症リスクが高まることで、50〜70代に多く見られます。
また、遺伝的な要因が強く、家族内で発症することも少なくありません。
本態性振戦は、食事をするときや飲み物を飲むとき、字を書くときなどの日常動作で特に目立つことがあります。
ストレスや疲労、カフェインの摂取で症状が悪化することもあります。
症状が軽度の場合は経過観察となることもありますが、日常生活に支障をきたす場合は薬物療法や、場合によっては手術療法が検討されます。
一般的に頭部画像検査では異常所見を認めません。
早期の診断と適切な治療により、症状の軽減が期待できます。
3)パーキンソン病
パーキンソン病は、脳内のドーパミンという神経伝達物質が減少することで起こる神経変性疾患です。
パーキンソン病の振戦には以下のような特徴があります:
・ 安静時に現れやすい
・通常、左右どちらかの手から始まる
・ 「薬をまるめるような」独特の動き(ピル・ローリング)が見られることがある
・ 姿勢をとると一時的に消えることがある
パーキンソン病の診断には、振戦以外にも動作の緩慢さ(無動)や筋肉の固さ(筋強剛)や姿勢反射障害といった運動症状も重要です。
また、精神症状やにおいの感覚が鈍くなる、便秘になる、睡眩中に激しく体を動かす(レム睡眠行動異常症)といった非運動症状も参考になります。
この症状に気づいたら、早めに脳神経内科医に相談することをおすすめします。
適切な診断と治療により、症状の軽減が期待できます。
4)バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
バセドウ病は甲状腺機能亢進症の一種で、甲状腺ホルモンの過剰分泌が特徴です。
この疾患では、細かい振戦が主要な症状の一つとして現れることがあります。
しかし、振戦だけでなく、動悸、体重減少、発汗過多など、多様な症状が併発することが多いです。
これらの症状は、過剰な甲状腺ホルモンが体内の代謝を加速させることによって引き起こされます。
5)その他の疾患
ふるえは、本態性振戦やパーキンソン病、バセドウ病以外にも様々な要因で引き起こされる可能性があります。
日常生活における一時的な状態から、より深刻な医学的状況まで、ふるえの原因は多岐にわたります。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、放置せず早めの受診をおすすめします。
- ふるえが数週間以上続いている
- 片側だけ強くふるえる
- 字が書きにくい・食事がこぼれるなど、生活に支障が出ている
- 動作が遅い、歩きにくいなど他の症状も伴う
- 家族に同じ症状がある(遺伝の可能性)
特に注意が必要な症状
- 突然片側のふるえが出た/徐々に強くなる
- ふるえと同時に、ろれつが回らない・うまく話せない
- ふるえと同時に、片側の手足に力が入りづらい・しびれが強い
- ふるえと同時に、意識がもうろうとする・反応が鈍い
※脳卒中など命に関わる脳の病気の可能性があります。迷ったら早めに医療機関へご相談ください。
当院で行える検査・診断
えびな脳神経クリニックでは問診の上、下記の中から必要な検査を行い、原因を特定し適切な治療をご提案いたします。
MRI


CT


頚部超音波


脳波


血液検査


心電図


・・など
「ふるえ=病気」と決めつける必要はありませんが、“脳の病気ではない”と確認できるだけでも大きな安心につながります。
当院の特徴
当日検査・当日結果でその日のうちに安心
MRI2台・CT完備。
原則受診当日に画像検査〜結果説明まで完結します。
脳神経外科 × 脳神経内科の専門医がふるえを診断
本態性振戦・パーキンソン病・脳卒中など、原因疾患をトータル診療します。
夜・土日も診療で仕事帰りも通いやすい
平日21時/土曜18時/日曜13時まで。
※初診は診療終了の1時間前まで
海老名駅徒歩1分の通いやすい立地
駅直結のViNA GARDENS PERCH 6階。
通院負担を最小限に。
ふるえによる「できない」をリハビリで支える
理学療法・作業療法・音楽療法など、個別リハビリが充実。
入院・手術が必要なときもスムーズ連携
近隣の基幹病院と連携し、検査〜治療〜フォローまで一貫支援。
「このふるえ、様子を見ていいのか不安…」
まずは一度ご相談ください。
ふるえの治療法
ふるえに対する治療アプローチは、その原因や症状の重症度に応じて多岐にわたります。
軽度の振戦から薬物療法が必要な中等度以上の症状、さらには外科的介入が検討される重度のケースまで、患者の状態に合わせた適切な治療法の選択が重要です。
ここでは、ふるえに対する様々な治療法を紹介し、それぞれの適応や効果について解説します。
日常生活の工夫から最新の医療技術まで、幅広い治療法を理解することで、より効果的な症状管理が可能となります。
1) 軽度の場合
・ ストレス対策や生活指導が中心
・ 書字の際は太めの筆記用具を使用するなどの工夫


軽度のふるえに対しては、まず非侵襲的なアプローチが推奨されます。
ストレス管理が重要な柱となり、瞑想やヨガなどのリラックス法の導入が効果的です。
また、十分な睡眠や規則正しい生活リズムの確立も症状改善に寄与します。
日常生活では、細かい作業時の工夫が有効で、例えば書字の際は太めのペンを使用したり、重みのある食器を選んだりすることで、ふるえの影響を軽減できます。
これらの小さな調整が、生活の質を大きく向上させる可能性があります。
2) 中等度以上の場合
中等度以上のふるえに対しては、薬物療法が主要な治療選択肢となります。
本態性振戦の場合:
本態性振戦の場合、ベータ遮断薬であるアロチノロール(商品名:アロチノロール塩酸塩)が保険適応で使用可能な薬剤です。
その他、抗てんかん薬のプリミドン(商品名:マイソリン)も効果的とされています。
これらの薬剤は、中枢神経系に作用してふるえを抑制します。


パーキンソン病の場合:
パーキンソン病による振戦には、レボドパ製剤をはじめとする抗パーキンソン病薬が使用されます。
これらの薬物療法は、症状の程度や患者の状態に応じて、専門医が慎重に選択・調整します。
3) 薬物療法で効果が不十分な場合
薬物療法で十分な効果が得られない重度のふるえに対しては、より侵襲的な治療法が検討されます。
主な選択肢として、脳神経外科的手術があります。
視床Vim核の凝固術は、ふるえに関与する脳の特定部位を熱で破壊する方法です。
また、脳深部刺激療法(DBS)は、脳内に電極を埋め込み、電気刺激でふるえを制御します。
これらの開頭手術は高い効果が期待できますが、リスクも伴います。
4) 最新の治療法: MRガイド下集束超音波療法


最新の治療法として注目されているのが、MRガイド下集束超音波療法です。
MRIを見ながらふるえの原因となる部位に向けて超音波を集束させて凝固破壊します。
超音波が頭蓋骨を貫通するため、従来の手術療法のように頭蓋骨に穴をあける必要がありません。
まとめ
ふるえにはいくつもの種類があり、緊張などの一時的な原因から、本態性振戦・パーキンソン病など病気が背景にあるものまで様々です。
「様子を見ていて大丈夫か?」と迷うときこそ、医療機関で原因をきちんと確認することが大切です。
治療は、生活の工夫・薬による改善から、必要に応じて最新の治療まで選択肢が広がっています。
早めに診断することで、症状を抑えながら日常生活をより快適に過ごせる可能性が高まります。
不安を一人で抱えず、気になるふるえがあれば早めにご相談ください。
ふるえに関するQ&A
院長からひと言



えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
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