認知症
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この記事を書いた人

えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
日本脳卒中学会(評議員)
日本血管内治療学会(評議員)
日本脳循環代謝学会(評議員)
米国心臓協会国際フェロー(Fellow of AHA・脳卒中部門)
日本神経学会専門医/指導医
日本内科学会総合内科専門医/指導医
日本脳卒中学会専門医指導医
日本認知症学会専門医指導医
厚生労働省認定外国人医師臨床修練指導医
「家族が認知症になったかもしれない」
「認知症になるとどのような症状が出るの?」
認知症は決して珍しい病気ではありません。
なんとなく「物忘れが多くなる」「外で迷子になる」などのイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。
今回は、具体的にどのような症状が出るのか、どのようにして治療を行っていくのかなど認知症について詳しく解説します。
認知症とは


認知症とは、脳の機能が低下することで認知機能が低下した状態のことです。
認知機能が低下する原因にはさまざまなものがあり、それらをまとめて認知症と呼んでいます。
2025年には約700万人、2040年には約584万人、2060年には約645万人以上と予測されています。
特に2040年には、65歳以上の高齢者の約15%、6.7人に1人が認知症になると見込まれており、非常に身近な病気となっています。
認知症で見られる症状
認知症では、大きくわけて「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つの症状が見られます。
中核症状
中核症状とは、記憶障害や理解力・判断力が低下することで起こる症状のことです。
- 数分前のことが思い出せない
- ものをしまった場所をすぐに忘れる
- 何個も同じ商品を買ってくる
- 今日の日付や曜日がわからない
- 季節に適した服装ができなくなる
- 人が話を理解するのが苦手になる
- 掃除や料理の段取りがわからなくなる
- 道に迷うことが増える
- 失禁が増える
中核症状は、認知症の種類に関わらず共通してみられます。
行動・心理症状
行動・心理症状とは、中核症状にともなって現れる精神的な症状のことです。
必ずしも起こるものではありません。
生活環境や認知症の方との対応方法次第では、症状が現れないこともあります。
- 不安な気持ちが強くなる
- うつ状態になる
- 怒りっぽくなる
- 幻視が見える
- なくしたものを「盗られた」と思い込む「もの盗られ妄想」が出る
認知症の方が“困っているサイン”として現れることも多く、周囲の関わり方で軽減できる場合があります。
認知症と老化による「物忘れ」の違い
認知症と老化による物忘れには、大きな違いがあります。
| 認知症 | 老化による物忘れ | |
| 物忘れの特徴 | 体験したことそのものを忘れる | 体験したことの一部を忘れる |
| 物忘れの自覚 | 自覚はない | 自覚はある |
| 症状の進行 | 進行する | 徐々にしか進行しない |
| 物がなくなっと時の行動 | 誰かに盗られたと思う | 自分で探して見つける |
体験したことをそのまますっかり忘れてしまう場合は認知症、一部だけ忘れてしまうのは単なる老化による物忘れです。
たとえば認知症の方はご飯を食べたこと自体の記憶がなくなりますが、物忘れの場合は食べたことは覚えており何を食べたかだけを忘れてしまいます。
また、物忘れしている自覚が認知症の方にはありません。
そのため、何度も同じ質問をされることに対して「さっきも答えたでしょ!」と怒っても、「なぜ急に怒られたのだろう?」と思われてしまいます。
認知症の種類と特徴
アルツハイマー型認知症(最も多いタイプ)
認知症のうち、約70%はアルツハイマー型認知症によるものです。
アミロイドβというタンパク質が蓄積したり、学習・記憶に関与しているアセチルコリンの量が低下したりすることで発症します。
物忘れから始まり、少しずつ症状が進行していくことが基本です。
失語や運動能力の低下が見られ、寝たきりになる方もいますが、早期発見で治療選択肢が広がっています(新しい認知症治療薬:レケンビ・ケサンラが使える可能性があります) 。
▶︎ アルツハイマー型認知症について詳しく知りたい方はこちら
血管性認知症
脳梗塞や脳出血などによって脳がダメージを受けることにより発症する認知症です。
脳のどの部位が障害を受けるかによって現れる症状が異なります。
「まだら認知症」といって、できることとできないことに差が見られやすいことが特徴です。
同時にアルツハイマー型認知症を発症することもあります。
レビー小体型認知症
レビー小体というタンパク質が蓄積することで発症する認知症です。
認知機能の低下以外に、幻視や体を動かしづらくなるパーキンソン症状がよく見られます。
認知機能の低下より先にパーキンソン症状が先に目立つようになることもあるため、認知症だと気づかれにくい場合もあるでしょう。
前頭側頭型認知症
前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞が障害されることで起こる認知症です。
タウ蛋白やTDP-43と呼ばれるタンパク質が凝集することが原因だと考えられています。
万引きをしたり何度も同じ行動をくり返したり、時には暴力をふるったりなどの症状が代表的です。
自発的な発語が見られなくなり、会話がオウム返しになることもあります。
認知症の治療方法
薬物治療
アルツハイマー型認知症には、アセチルコリンの分解を抑えるコリンエステラーゼ阻害薬や、神経細胞の障害を抑えるメマンチンが一般的に使用されます。
これらは「症状をやわらげる」ことが目的の薬です。
一方、近年は認知症そのものの進行に働きかける疾患修飾薬(Disease-Modifying Therapy:DMT) が登場し、治療は大きく進歩しています。
当院では、厚生労働省が承認したレカネマブ(レケンビ®)、ドナネマブ(ケサンラ®) の診断・治療にも対応しており、早期の軽度認知障害(MCI)や軽度アルツハイマー型認知症の方に「進行スピードを遅らせる」という新しい選択肢をご提供できます。
DMTは効果が期待できる段階が限られているため、早期の受診が特に重要になります。
血管性認知症は、再発を防ぐために血液をサラサラにする薬を使ったり、高血圧や脂質異常症の治療を行うことが基本です。
レビー小体認知症では、アセチルコリンの分解を抑えるドネペジルが治療薬として適応をもっています。
前頭側頭型認知症には、現時点で確立した治療薬はありませんが、行動症状に対してSSRI(抗うつ薬)などが有効とされる場合があります。
非薬物治療
認知症の種類や症状によっては、薬を使わない方法も有効です。
とくに行動・心理症状に対しては、非薬物治療を行うことで症状の軽減が期待できます。
運動療法や音楽療法、認知行動療法などが代表的です。
認知症といっても原因や状態によって治療はさまざまです。
ご本人に合った方法を選ぶためにも、まずは正確な診断が欠かせません。
認知症の方の対応を行うときに心がけたいこと
ご家族の方が認知症になり、毎日大変な思いをしながら過ごしている方も多いでしょう。
数分おきに何度も同じことを聞かれたり、盗人扱いされたりすると、介護している側のメンタルも徐々に弱ってしまいます。
しかし、認知症の方との対応を少し変えるだけでも症状が緩和され、お互いが楽に過ごせるようになることも少なくありません。
話をしっかり聞いてあげる
同じことを何度も聞かれると、うんざりするかもしれません。
しかし、認知症の方にとって、その質問は「初めての質問」なのです。
「何度同じことを聞くの」と怒りをあらわにしてしまうと、「私のことが嫌いなのかな?」と思い、塞ぎ込みがちになってうつ状態になってしまうケースもあります。
同じ話にもしっかりと耳を傾け、必要に応じて「代わりに私がしっかり覚えておくので大丈夫ですよ」と声をかけてあげてください。
すると、安心感を覚えて質問する回数が減ることがあります。
ご本人の発言を否定しない
「あそこに犬がいる」「人がいる」と、何もない空間を指して言われても、「そうだね、犬がいますね」など、話を合わせましょう。
本人にとっては、そこに犬や人が実際にいるように見えているのです。
畳んだタオルや干している服が犬や人に見えていることもあるので、実際にそれらを触らせて「違う」ということを認識させるのもよいでしょう。
ご本人も「記憶しとかないと」と強く意識していることを認識する
「認知症の方はなにもわかっていない」と思っていませんか?
実は「あのことを忘れないようにしよう」と必死に覚えようとしています。
忘れてはいけないと強く意識しているからこそ、何度も何度も同じことを聞いてしまうのです。
常に「あれはちゃんとやったっけ」「話したっけ」と不安な気持ちでいっぱいだということをわかってあげましょう。
当院で行える検査・診断
えびな脳神経クリニックでは問診の上、下記の中から必要な検査を行い、原因を特定し適切な治療をご提案いたします。
MRI


CT


認知機能検査


血液検査


心電図


超音波検査


・・など
もの忘れは、誰にでも起こり得るごく自然な変化です。
しかし、その“もの忘れ”が 加齢によるものなのか、病気によるものなのかを確かめておくことは、とても大切です。
脳の状態を一度確認しておくだけでも、「この先どうしていけばいいのか」が明確になり、ご本人もご家族も安心して生活するための大きな一歩になります。
当院の特徴
当日MRI・CTで早期に原因を確認
MRI2台・CT完備。
多くの方が受診当日に画像検査〜結果説明まで完了します。
「脳の病気かどうか」を早めに確認することで、安心につながります。
脳神経外科 × 脳神経内科が物忘れの原因を総合評価
加齢による物忘れから、アルツハイマー型認知症・血管性認知症などの認知症疾患まで幅広く診断します。
認知症疾患医療センター(連携型)として支援
地域の医療機関・介護事業所・行政と連携。
診断だけでなく、その後の治療や生活支援まで見据えてサポートします。
夜・土日も診療で、ご家族も通院しやすい
平日21時/土曜18時/日曜13時まで診療。
※初診は診療終了の1時間前まで
海老名駅直結の通いやすい立地
駅直結のViNA GARDENS PERCH 6階。
足腰に不安がある方でも、移動の負担を最小限に通院していただけます。
入院・高度検査が必要な場合もスムーズにご紹介
入院や精密検査が必要な場合も、地域病院とスムーズに連携します。
「年齢のせいかな…」と思う物忘れも、一度確認するだけで大きな安心につながります。
認知症に関するQ&A
院長からひと言



えびな脳神経クリニック
院長 岩田智則
関連ページ









認知症は「人生が大きく変わってしまう病気」と思われがちですが、実際には、早く気づき、早く対応することで、これまでの生活を続けられている方がたくさんいらっしゃいます。
もの忘れの背景には、加齢だけでなく、治療できる病気が隠れていることもあります。
だからこそ、「これは年のせいなのかな?」と感じた段階で一度確認しておくことが、とても大切です。
大事なのは、ご本人もご家族も一人で抱え込まないことです。
小さな気づきでも構いません。
どうぞ遠慮なくご相談ください。
当院では、医師による診察に加え、リハビリ・介護・生活支援まで含めた多職種チームで長く寄り添う医療を大切にしています。